ずっと心にこびりついて離れない言葉がある。
起業準備中の2022年の末頃、民間資格をとりに行った時のことだ。
『そうんなの いい! いい! もっと楽しくてハッピーなことだけ言えばいいから!』
自分をアピールするための自己紹介を考えて発表した時のことだったと思う。
「医療の知識や理学療法士としての経験からお手伝いできることも多いと思うので…」の部分にバツが付いた。
『ママたちは産後にネガティブな想いを持ちたくないのに、医療とか言われたら敷居が高く感じるし、理学療法士ってリハビリでしょ?リハビリ受けるほど高齢じゃないわって思われちゃうよ』とのご指摘だった。
(なるほど、そういうものか)と組み立て直したのだが、どんな自己紹介だったか全く思い出せない。
同じようにこびりついている言葉が。
同級生の結婚式に出席した際、2次会の会場まで友人を車に乗せたことがあった。
わたしはあるアーティストが大好きで、移動中は専らその楽曲を聴いている。
『まだ(アーティスト名)なんだ』
車に乗った友人が開口一番こう言った。
「そうだね、ずっと好きだからね」と上辺を繕いつつ、(まだってどういうこと?)と心の中で動揺する。
もともと頻繁に会う仲ではなかったが、彼女とは以降会っていない。
わたしたちは、一人ひとりが全く違う人間だ。
年齢、性別、肌や目や髪の色、身長や体重、食べるもの、着る服、住んでいる場所や生活リズム、よく聞く曲に好きな本、歩き方に至るまで、誰一人として同じ人はいない。
属性であちこち引かれた線の あっちやこっちに大別されることはあっても、結局はたくさん引かれた線が作るひとマスに一人ひとりが立っている。
そこから見える景色は様々で、全く同じものを見ることはできない。
産後は、本当に色々なことが変わる。嬉しいことや楽しいことと同じくらい、頭を悩ませる問題もやってくる。
【悪露 終わる いつ】
【母乳 不足感 目安】
【生後1ヶ月 顔 湿疹】
【ミルク 混合 どれくらい】
【乳腺炎 対処法】
【寝返り いつ】
【お宮参り お食い初め いつ】
【風邪薬 母乳移行】
【夜泣き いつまで】
【肩こり 腰痛 対処法】
【離乳食 いつから】
【ハイハイ いつ】
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夜な夜な検索した不安の痕跡。初めてのことばかりで、わからないことを検索せずにはいられない。
放っておいたら死んでしまう小さな命を守るのには、正しい知識が必要で。
抱えきれない不安を吐き出して抱え切れる大きさにするには、話せる相手が必要で。
それと同じくらい、自分の心を守るのも大切で。
きちんとしている頑張り屋なママほど、自分で調べて、自分で対処して、誰にも相談できなくて。
『そんなことも知らないの?』
『そんなこともできないの?』
『普通母親ならできるでしょ』
そう言われるのが怖くて、相談できずに心身を壊してしまうママがいる。
そう言われたことがあって、完璧さを求めるあまり自分を傷付けてしまうママがいる。
わたしたちは自分のことを理解してほしいと、ずっとずっと思っている。
それは人間の根源的な欲求だ。
成長するにつれて『それはワガママだ』と言われることが多くなり、自分らしさを社会性というハコに押し込めて、折り合いをつけて生きることを覚えていく。
紋切り型の大量生産が得意な日本特有だろうか。
完璧じゃなくていいよ
わからなくても大丈夫だよ
いつでも相談していいんだよ
今まで生きてくれてありがとう
頼ってくれてありがとう
ありのままの『わたし』で大丈夫
どんな『わたし』も大切な『わたし』
人生が一変する時期だからこそ、新しい『わたし』に出会えるよう、ゆっくり伴走していきます。
『わたしらしさ』に出会えるパートナーとして。