moundtailのブログ

『人生のマウンドに立つ人を応援する』をコンセプトに掲げ、母親支援を中心に、子育て・医療福祉・組織開発の分野でケアラーズケアをしている女性経営者のひとりごと。

1年をふりかえって

このブログも開始から1年を過ぎ、事業も準備から数えてそろそろ1年になります。

わたしが何をしたくて事業を始めて、どこに向かおうとしているのか、今一度言語化して行きます。

 

少子化や子育ての課題解決に産後ケアは必要不可欠】

妊娠・出産・産後の時期は、女性の人生の大きな転換期であると同時に、現代の社会構造から孤独を抱えやすく、自死や虐待などの様々な危険性を孕んでいます。

産前・産後の支援を切れ目なく行うため、産後ケアなど公的支援の拡充が急がれていますが、まだまだ認知度は低く、その内容もフィットしたものが少ないのが実情です。

わたしが事業を始めたのは、そんな社会からの要請もありますが、産後に自身がうつを患ったものの、医療機関のお世話になれたことで今を生きている一人として声を上げていく必要があると感じたためです。

八戸市には、デイ型と宿泊型の産後ケア施設がありますが、訪問型の産後ケアはありません。

また、八戸の周辺地域(おいらせ町、階上町、南部町、五戸町、三戸町新郷村、田子町)には産後ケア施設がなく、産後ケアを受けたいとき、八戸市まで移動しなければなりません。

このような現状から、訪問型サービスで産後の女性に寄り添うように考えました。

 

【お家に一人大人が多いと、とっても助かる】

訪問型には利用者にとってたくさんのメリットがあります。

デイ型や宿泊型などの通所型の産後ケアではデメリットとなる赤ちゃんとの移動や必要物品の準備、出かける前の身支度、慣れない施設内では休息が難しいなどの問題が、訪問型では解消しやすいのです。

必要物品は家中にあるので準備の必要がなく、もちろん赤ちゃんとの移動は必要がありません。外出しなくていいので、身支度は必要なく、部屋着・ノーメイクでOKです。施術が終わった後は、慣れ親しんだ寝具で睡眠をとることもできます。

また、通所型の産後ケアでは、せっかく出かけて行って回復できたとしても、家に戻ればまた家事が待っています。

赤ちゃんのいる状態の家事は、泣き声で何度も中断することがあり、段取りどおりに進まず完遂することが難しいため、イライラも抱えやすいのです。

訪問型の場合、作り置きなどの家事を代行することもできますし、ママが達成感を味わいたければ、赤ちゃんのお世話を任せていただき、家事に没頭することもできます。

 

【産後の女性の回復には、一緒に伴走する戦友が必要】

訪問型サービスの中でも整体という方法を取ったのは、理学療法士の資格があることに加え、産後は分娩による身体のダメージがありながら、授乳や抱っこで慣れない姿勢を取ることが多く、十分な回復ができずに不調を抱えたまま育児をしている女性があまりにも多いからです。

授乳の仕方や抱っこの方法は産院の両親学級などで学ぶことが多いですが、それをいかに楽に、正しい姿勢で行うにはどうするか、産後の疲れ切った身体をどうやって回復に向かわせるかまでは教えてもらえないことが多いのです。

産後ケア施設で提供されている睡眠や休息も、もちろん大事。そこにプラスして身体を緩める方法を教えたり、自力でできないほど凝り固まっている場合は施術により外側から緩めることも大事。で、緩めるだけじゃなくて、うまく身体を動かせるような身体づくりの部分や楽な姿勢・動作を実際に一緒にやっていくことも大事だと思っています。

また、産後の不調を抱えたままでいるとどうなるか。子育てが終わってホッと一息つく頃、自分の身体が思っていたよりボロボロなことに気付くのです。関節炎や不良姿勢、尿漏れ、子宮脱や肛門脱などの骨盤臓器脱…これらが起こってくる可能性があります。

そのような後悔がないよう、産後(本来は産前・妊娠前から)に伴走する戦友が必要だと思っています。その戦友が、高齢期の疾患も把握している専門職なら、より安心ではないでしょうか。

 

【カラダだけじゃない。ココロも。】

身体の不調がなくても、妊娠・出産・育児の時期は、気持ちのモヤモヤを抱えやすい時期だと思っています。特に、近年は昔に比べるとそれが強くなったのでは?と思っていて。

一つには家族形態の変化。三世代同居の家族像は少数派になり、核家族が当たり前になりました。これは本当に勝手な憶測なのですが…大家族だと手が多くて助かるのはもちろん、関係性が多方向なので、意識の分散があったと思うのです。どういうことかというと、『お義母さんに家事にケチつけられた。チッ』とか、『お義父さんはまたどっかり座ってるだけ。ハァ』とか、『あなた(夫)も黙ってないで少しは味方してよ』みたいな(※完全なる妄想家族です)。一方で、『子どもは可愛いなぁ。わたしが守らなきゃなぁ』と、家庭内に対象がたくさんいたことで、育児に関するモヤモヤはいい意味で見過ごせたのではないかと思ったりします。

もう一つは情報化社会による変化。子育てや発達に関する情報に簡単にアクセスできるようになったり、他の家庭の育児が垣間見えるようになりました。役立つ情報を得られるメリットはありながらも、キラキラ育児と自分の現状を無意識に比べて抱えるモヤモヤや、育児書に書いてあることに当てはまらない事象に出会った時の不安というのは、誰しも覚えがあるのではないでしょうか。

そのモヤモヤって、抱えていると、どんどん大きくなって無限に膨らんでいってしまう。だから、まずは自分の口から外に出すこと。たっくさん話してモヤモヤが抱えられるくらいの大きさになったら、また日常に戻っていく。全てを無くすことはできないけど、一緒におしゃべりする中でちいさく・かるくするお手伝いはできるのかなと思っています。

先日行ったコミュニティ型イベント『うちの子のあーだこーだ。』を企画・主催してみて、話すことを通じてあたたかい場を作ること、育児のモヤモヤを言語化することがわたしの天職なんじゃないか。一見簡単そうで一番大事、そしてわたしが本当に得意としていることだと思いました。

 

【『誰か』を待たない。真っ直ぐではない道を『わたしがやりたい』】

わたしがやらなくても、他の誰かのチカラでほんの少しずつ課題はなくなるかもしれない。

他の誰かが声を上げて戦って作ってくれた波にただ乗りすることもできたかもしれない。

でも、それはいつになるんだろう。10年後かな?20年後かな?

娘や息子が親になる頃は、わたしたちの住む八戸にも十分な支援があるのだろうか。

子育て世代に魅力的な八戸になっているのだろうか。

そもそも住みたいと思ってくれる人がいなければ、街は続いていかない。

『この街に住み続けたい!』と思ってもらえるように、子育て支援からまちづくりを支えたいという思いも同時にあります。

単なる既存の産後ケアで終わらせずに、よく動く感情と未来を見る目を活かして、新しい価値を提供していくことが、わたしのやりたいことです。

たとえ失敗することがあっても、それは全然問題じゃないんです。わたしが死ぬ時に自分を活かせなかった後悔の方が怖いな、と思っています。

そこに、方法論はあまり意味をなさないと思っています。傷を最小限に抑えるためには大事だけど、人の言うことを聞ける人間なら起業してないので、たまに転んでもあたたかい目で見てやってくれたら嬉しいです。

 

【ちょっと逸れますが、領域のお話】

ここまで書いてきたようなことって、自分で振り返ってみてもちょっと特殊だな、と思っていて。母子保健、産後ケア、医療・福祉、ウィメンズヘルス、ネウボラ理学療法、トレーニング、コーチング、まちづくり、起業家・実業家…どれにもバシッと当てはまらないというか、どれにも当てはまるというか。

わたしが欲張りだからでしょうか。すごくたくさんの要素で構成されていて、一つの領域に収まらないなと思います。起業してみると色々なコミュニティがあるのですが、どのコミュニティをのぞいてみてもわたしみたいなのはあまりいなくて、なんか、、、ポツーンってなってます(笑)

ロールモデルがいないので、どうやって収益化していくのかとか、集客の方向性とか、はっきりは見えないままなんですが、でもそれがいいとも思っていて。少数でも、『そうそう!』『そう言うのが欲しかった!』『あなたみたいな人に会いたかった!』っていってもらえるようになってきているので、これからもいろんな領域のはざまで、自分らしくいたいなと思います。

 

【さらに、もっと先へ】

本事業を開業する際につけた屋号は『Conditioning Partner』。健康づくりのために全身調整(コンディショニング)をする伴走者(パートナー)でありたいと思ってつけたものです。

先日テレビを見ていたら、早稲田大学の金岡教授がこんなことをおっしゃっていました。

『わたしは結構アスリートを見るんですけど、アスリートというのはパフォーマンスを上げるために色々なコンディショニングをしています。わたしたちも、競技をするわけじゃないけれど、日常生活をいかに快適に過ごすか、究極には歳を取っても寝たきりにならない、いわゆる健康寿命いかに伸ばすか、それを高めるためにライフパフォーマンスを高める必要がある。それにはアスリートと同じようにコンディショニングを日頃からしていくことが必要じゃないかと思います。自分たちもアスリート、人生のアスリート。』

NHKの『あしたも晴れ!人生レシピ』の番組の締めくくりにこのように話されていて、目ん玉が飛び出る思いでした。

わたしが理学療法士を志したのは、スポーツに関わる仕事をしたいと思ったから。今は違う領域にいますが、どうしても思考の根底にあるのは『パフォーマンスを上げるためにコンディショニングが重要』という概念だったのでしょう。「コンディショニングは分かりにくいから変えた方がいい」と何度言われても変えられなかった。それが屋号になった。しかも、薄ぼんやりとしか描けていなかった、全人類を対象としたわたしのやりたいことがこれだったんだと、まさしく言語化されていました。

今の名刺には、屋号と合わせてこのように表記しています。


産後の分野でさえまだまだの状態ですが、全人類的健康づくりへも発展させていけたら幸せだと思っています。

今後ともお付き合いいただければ幸いです。

 

Conditioning Partner 代表 つかお さき