moundtailのブログ

『人生のマウンドに立つ人を応援する』をコンセプトに掲げ、母親支援を中心に、子育て・医療福祉・組織開発の分野でケアラーズケアをしている女性経営者のひとりごと。

医療制度とリテラシーのハザマ

今日、パート仕事を終えてスマホを開くと

珍しい人から着信が入っていた。

父方の叔母(父の姉)だ。

 

👩🏻どうしたのー?

と折り返すと、

🧓🏻最近どうしてるかなーと思って

と。

 

商屋さんに嫁いで行った叔母は

市内でも人気の温泉を切り盛りするなど

大変なことをそつなくこなすが控えめな人。

事業につながるアイデアはないかと

相談のための数ヶ月前に電話をしていた。

😙心配してくれたのかな?

と思いつつも

🤔あまり興味なさそうだったけどな???

と不思議に思いながら

ポツポツと近況を報告すると

🧓🏻そうなんだ〜それでさ、最近風邪引いちゃって…

 

ここでピンときた。

医療従事者ならほとんどの人が履修済みのこの科目

『近場の医療従事者に聞いて手間を省こう作戦』

これだ。

 

よくよく話を聞くと、

🧓🏻少し前に姑(従兄弟の祖母)共々高熱の出る風邪()をひき、姑も連れて夜間救急に行ったところ検査を勧められなかったので薬だけもらって帰宅。健◯ハ◯ス(ヘルシー住まいの英語と日本語逆にしてください)とか言う店?でイベルメクチン()をもらい飲んだら咳など風邪()の症状は良くなった。イベルメクチン()もいろんな種類があるらしいからね、効くやつでよかった。でも姑は手の震えが出ている。加齢によるものかな?風邪()の後遺症かな?なんだろう?歩くのも支えてやっとになってしまい、リハビリを受けたいのだがどうしたらいい?

と言う内容だったorz

 

まず、八戸市内では至るところでインフルエンザの発生が相次いでいる。我が家も例に漏れず娘が学校でもらってきたようで、息子も罹患し2人あわせて1週間の療養。この間全員マスクを徹底し、私たち夫婦は症状もなく無事逃げ切ったのが先週のこと。

症状から察するに時期的に同じ頃にインフルエンザに罹患したものと思われる。もしくは新型コロナの可能性もあるが、検査をしていないので定かではない。夜間救急の医者もなぜ検査しなかったのだろうとは思うが、夜間救急の機能が一般のクリニックが開く翌朝までに重篤になりうる患者がきた場合の窓口であろうことから、翌朝まで待たせられる患者であれば無理に検査や処方をしなかった可能性が高い。

今となってはどっちに罹患しているかは大したことではない。医師の処方箋もなく、イベルメクチン()を買える店があり、『これは他とは違う良いもの』と謳って売り出し、信じて飲んでしまった人がいることが大問題だ。

 

イベルメクチンは寄生虫によって引き起こされる乾癬という疾患の特効薬だ。風邪()の薬ではない。

新型コロナが流行り始めた頃、イベルメクチンが治療薬になりうるかもしれないとの情報が出回り、新型コロナワクチンの接種を回避したい層がこぞってイベルメクチンを求めた。未知のワクチンを体に入れるくらいなら、予防的に効くかもしれない薬を投与すれば良いという考えらしい。そういう層にとっては、イベルメクチンを処方してくれる医者はヒーローであり、そのような医者が近くにいない場合は海外から個人輸入して取り寄せ、人間用が取り寄せられなくなったら家畜用を取り寄せて新型コロナと戦って勝ったのだそうだ。

結果どうなったか。乾癬の治療で本当にイベルメクチンを必要としている人に一時的に供給が難しい状況に陥った。ここまでが1、2年ほど前までのイベルメクチンにまつわるお話。

 

普通の医師は用もないのにイベルメクチンを処方しないし、一般のお店でイベルメクチンが手に入ることはまずありえない(薬局でもドラックストアでもまずありないが)。イベルメクチンには『良いもの』も『悪いもの』も存在しないし、種類があったとして『人間用』か『家畜用』または『◯mg』などの用量の別があるだけである。『一般のお店で良いイベルメクチンが手に入るという状況』を疑問に思うべきだろう。

 

これまでの経緯を知っていると、個人輸入などでストックしておいたは良いものの、新型コロナも下火と思われる状況になり、行き場を失った薬の末路が『風邪()にも効く万能薬!』のような形で健康食品のお店に並ぶようになったのではないかと推察される。加えて、粗利を稼ぎたい売主は、元の薬にビタミン剤やサプリメントの類を加えて販売している可能性もある。

 

叔母の姑に出た手の震えの症状は、

・加齢

・風邪()の後遺症
・新たな疾患の発現

・イベルメクチン()の薬害

など様々考えられるが、医師が詳しく検査をしてみないと判定できない状況にある。叔母には、以上の経緯を伝えた上で、薬を持って医師にかかることを提案した。

リハビリに関しても、通院にしろ入院にしろ在宅にしろ、医師の指示がないと受けられない。とにかくまずは受診してほしい旨伝えた。

 

すると、

🧓🏻今まで介護保険で認定を受けたこともあったが、御歳90歳にして元気に畑に立っているものだから要支援の1or 2にしかならず、大してサービスの利用もできず今に至る。再度介護認定を受けるにしても開始まで時間がかかるし、満足にサービスが受けられるかわからない。

と言う。

介護保険は限度額内で保険の補助を受けながら介護サービスを受けるためのもの。お金の制限なく利用したい人であれば、介護度に関わらず予防的に自費でリハビリを受ける人も…と言いながら気付いた。そういうことか。

 

🧓🏻あんたはそれできないの?

 

叔母はこれが言いたかったのである。完全にしてやられた。はぁ。行きますけどね。様子を見るだけ見に行って病院にきちんとかかることを念押ししに行こうと思います。

 

 

 

医療制度は基本的に時間がかかる。

オンライン診療などDXは進められておるものの、浸透するのは現在現役で働くITオンチの医療従事者が退役した後だろう。

その間、医療制度のハザマに落ちた人をパックリ口を開けて待っている魑魅魍魎がたくさんいる。

リテラシーがあるとこのような事例で騙されることは防ぎやすくなるが、人間は楽をしたい生き物。

良い体験が失われた医療においては、我慢強くリテラシーに従って行動できる人しか『標準医療』にかかれなくなっている。

医療における『体験の質』を上げなければいけないと感じた場面に接した1日であった。